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社説 長寿社会に信託の力を生かせ

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 超高齢化の進展に伴い、長い人生を支える多様な金融サービスが信託業界で広がっている。家計金融資産の6割を60歳以上が保有するなか、とりわけ遺言などの資産承継や世代間の資産移転といった分野は期待が大きい。一方で認知・身体機能が低下する高齢者向けの商品開発や、一般消費者への信託業務の浸透も急がれる。最近は信託代理店契約や信託ビジネスに本体参入する地域銀行も増えており、金融界全体で信託機能の活用・定着に知恵を絞ってほしい。
 信託財産総額は2019年2月末で1176兆円と拡大が続いている。近年はオーダーメードで財産管理ができる「遺言代用信託」の受託が急増し、累計で16万4千件に達する。相続の発生時に葬儀費用などをあらかじめ指定した人が受け取れるようにするなど高齢社会にマッチした設計が受けている。「教育資金贈与信託」「結婚・子育て支援信託」なども信託の付加価値を高める商品といえる。
 人生100年時代を迎え、急がれるのが認知症への対応だ。30年には家計金融資産1800兆円の200兆円を認知高齢者が保有するとの試算もある。
 信託各行は家族などの同意がないと支払いできない「解約制限付き信託」を扱っているが、最近は本人の思いをくんで代わりに支払いを行う代理人を設定できる信託も出始めた。70歳以上が人口の20%を超える長寿社会に入り、高齢者の気持ちに寄り添う商品の広がりに期待したい。また身体機能の低下に備え、信託商品と生活支援を一体化したサービスも求められる。
 信託機能を幅広く浸透させるためには、信託銀の店舗網だけでは限界がある。地元の旺盛な相続ニーズへの対応で信託銀の信託代理店となる地域銀が増えている。自ら信託免許を取得する動きも活発だ。信託協会に加盟する地域銀は27行まで増えた。信託銀と地域銀が連携、切磋琢磨(せっさたくま)するなかで信託機能の活用を根付かせてもらいたい。
 信託は「社会・経済の持続的発展を支える基盤」とされる。信託の担い手は創意工夫を持って取り組み、その地位をより確かなものにしてほしい。2019.4.19


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