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社説 対話深化させ育成庁へ転換を

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 金融庁は8月28日、2019年度の金融行政方針を発表した。ここ数年の傾向と変わらず、地域銀行の持続可能性への言及は多い。目を引くのは、誰もが不安を感じず安心して発言・行動できる雰囲気を指す「心理的安全性」という概念を踏まえ、地域金融機関を監督していくとしたことだ。金融機関との対話の改善には力を入れてきたが、依然として壁は残る。地域銀行を取り巻く環境は厳しさを増しており、フラットな対話で金融機関ごとに課題解決の道を探っていくことが重要だ。金融庁が自らうたう「金融育成庁」への進化のカギでもある。
 金融庁が地域銀行の持続可能性を懸念するのは、収益状況が芳しくないためだ。19年3月期の顧客向けサービス業務(貸出や手数料ビジネス)の利益は、105行中45行が連続赤字。うち5期以上連続赤字が27行にのぼった。低金利要因は大きいにせよ、現状のままでは地域経済への影響が見過ごせなくなる。
 このため、金融庁は今回、人事ローテーションに関する監督指針見直しや、金融機関同士の資本の持ち合い(ダブル・ギアリング)規制の緩和など、地域金融機関の持続可能なビジネスモデル構築に向け、新たな施策をパッケージ的に示した。また、今後、健全性確保の規律付け・インセンティブという位置づけで、可変預金保険料率の検討を始めることを明らかにした。
 人事ローテーションについては、不正防止のため同じ支店に連続3年以上勤務させないなどのルールが金融機関によってある。これが取引先から担当者が短期間に変わるという批判を招く一因になっていた。
 可変預金保険料率が導入されれば、納付保険料の減る金融機関は歓迎だろう。金融庁の言う通り、健全性を高めるインセティブになり得る。ただ、“アメ”にも見える施策を、再編を促す材料にするようなことがあってはならない。経営統合や合併はあくまで経営判断だ。
 見直された早期警戒制度の運用も始まった。数値基準抵触前に業務改善命令を出すことがあり得るだけに、なおさら納得感ある対話が重要となる。2019.9.6


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