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社説 二つの“シンカ”が試される

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 新型コロナウイルス感染拡大の経済への影響が、日ごとに深刻化している。事業者の資金繰りをしっかり支える役割が金融機関に求められることは言うまでもない。終息時期が見通せず、難しい面はあるが、廃業や倒産を増やすことになれば、日本経済の持続可能性は大きく低下する。自らの健全性も意識しつつ、適切に対応してもらいたい。
 政府は資金繰り支援策を拡充するとともに、金融庁は柔軟に条件変更へ応じるよう要請した。全国銀行協会も適切に対応していくことを申し合わせた。多くの金融機関が特別融資などを設け、積極的に相談に応じており、過去の危機の教訓は生きている。ただ、今回難しいのは、先行きが極めて不透明な点だ。
 例えば宿泊業の場合、仮に3カ月後にコロナ騒動が終息し、観光客が戻ることが確実ならば、支援は簡単だ。しかし、現状では終息時期はみえず、実現可能性の高い再生計画を策定するのは容易ではない。一時的に返済を猶予しても問題が長期化し、客足が戻らなければキャッシュフローは改善せず、いずれ返済困難に陥る。それは金融機関の不良債権増加を意味する。
 検査マニュアル廃止で、引当金を積み増し、柔軟に対応できるようになった。業況が回復すれば、戻り益となる。しかし、単に条件変更しただけでは、その可能性は高まらない。部品調達が困難になった先へ新たな供給者を紹介するなど、短期的な資金繰り支援と並行して、中長期的視点でプラスアルファの支援を考えることが重要だ。
 今回の経済危機は、観光客を含め中国からの供給が途絶えたことが発端だ。その後、各国が集会や移動を制限し、観光・飲食など幅広い分野で消費に急ブレーキがかかった。影響は金融市場にまで広がり、不安が増幅されている。ここで金融が目詰まりを起こせば、さらに事態は深刻化する。
 過去にあった金融危機時と違い、現時点で金融機関の健全性は維持されている。資金仲介者としての“真価”と同時に、検査マニュアル廃止などを受けて、“進化”した金融をみせられるかが試される。2020.3.20


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