社説 危機の今こそ銀行の出番だ
7月1日、「銀行の日」を迎える。銀行本来の役割を見つめ直そうと本紙が1991年から提唱を始め、今年で30年目の節目となる。コロナ禍で景気は落ち込んでおり、今こそ銀行の出番だ。資金繰り支援にとどまらず、危機をバネに持続可能性が高まるよう取引先の変革を後押ししてもらいたい。
過去30年を振り返ると平成の金融危機、リーマン・ショックと大きな危機に2回遭遇した。平成の危機は、不良債権問題に端を発した国内金融機関の経営悪化が引き起こした。貸し渋り批判も浴びた。リーマン危機は発生源こそ米国だったが、国内金融機関に波及し、本来の役割を十分に果たせたとは言い難い。
危機の形態が異なるとは言え、今回のコロナ禍では、おおむね金融仲介機能はしっかり果たされており、評価できる。ただ、資金繰り支援のために設けられた無利子・無担保の制度融資の扱いには注意が必要だ。保証がつくことを前提に、リスクフリーの資産を積み上げられる制度と、はき違えるようなことがあれば、銀行批判を招くだろう。
さらに、過去の危機と違うのが行員のモチベーションだ。本紙が5月に行った営業店を対象にしたアンケートでは、取引先から頼られることに「過度な金利競争で薄れていたやりがいが戻った」や「銀行員冥利(みょうり)に尽きる」など自らを鼓舞する声も多かった。
大事なのは今回の変化を一過性のものにしないことだ。既に取引先の売り上げ回復を支援するさまざまな取り組みは始まっており、取引先との長期的な関係構築につなげたい。それが、自らの持続可能性を高めることにもなる。
銀行の日は1893年(明治26年)7月1日に現在の銀行の基礎となる「銀行条例」が施行されたことにちなむ。原点に思いを寄せ、新たな一歩を踏み出す日としたい。2020.6.26
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