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社説 「顧客本位」の再徹底必要

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 金融機関は、顧客本位の金融商品販売を徹底してもらいたい。銀行などが販売した外貨建て保険に対する苦情が2019年度に過去最多となった。金融庁は、19事務年度に行った顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果を踏まえ、依然として商品カテゴリー間で、収益性の高い商品への取引偏重傾向がみられることなどを指摘した。顧客本位が疎(おろそ)かになれば、いずれ顧客離れを招くだけでなく、重大なコンプライアンス違反につながる可能性がある。
 生命保険協会のまとめによると、19年度に銀行等代理店で発生した外貨建て保険・年金の苦情は2822件で、18年度比279件増加。約7割は高齢者向け販売で為替変動や元本割れリスクの説明が不十分だったことに起因する。形式的に説明の証拠を残しても、顧客本位とは言えない。
 業績評価や目標設定のあり方も注意が必要だ。金融庁の調査では、業績評価で外貨建てと円建て保険の差をなくした結果、外貨建て比率が大きく低下した銀行がある。現場の行動は評価の仕方や、目標で大きく変わることを経営陣はしっかり認識してほしい。
 過去には、過度な目標設定から、顧客本位を逸脱し、不適切販売や不正につながった事例もある。足元ではコロナ禍で、これまで通り対面での金融商品営業が難しくなっている。こうした環境下で目標達成が優先されれば、不適切販売につながりかねない。
 金融庁が求める提案プロセス改革も必要だ。顧客の資産全体ではなく、「遺す資産」など、色分けされた一部資金に対して個別商品を提案していく手法では、売り手本位になりがちだ。
 金融機関の多くは、経営理念に顧客第一を掲げている。顧客本位は持続的成長を実現する源だ。経営陣から現場まで、そこを肝に銘じて改善に取り組んでもらいたい。2020.8.7


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