社説 引当と支援を一体的に
銀行の2020年9月中間決算が出そろった。コロナ禍で与信費用が増え、中間純利益は大手行5グループ、地域銀行とも前年に比べ3割超減った。想定を下回ったとの声は多いが、安堵(あんど)はできない。足元で再び感染が拡大するなど、予測しづらい状況が続く。適切な引当と取引先の本業支援を一体で考えていくことが重要だ。
大手行グループの与信関係費用は前年の5倍超、地域銀は約25%増えた。歴史的低水準で推移していた与信コストの流れは明らかに変わった。ただ、中間期では、「デフォルトの発生する時期が少し先送りされた」(大矢恭好・全国地方銀行協会会長)面がある。5月に始まった無利子・無担保融資など資金繰り支援の効果だが、経済活動の停滞が長期化する恐れもあり、これからが正念場になる。
一部の銀行は、中間期で予防的に引当を積み増した。フォワードルッキング引当や、業種ごとにグルーピングして引当を積む方法を検討する銀行もある。将来を見越して対応していくことは重要だ。そのうえで取引先をどう支えていくか、知恵を絞る必要がある。
無利子・無担保融資の利子補給期間は3年、据え置き期間は最大5年。この間に、どう取引先の事業を立て直すかが勝負どころになる。場合によっては、事業転換・再編を促す必要もあろう。資金繰り支援と引当だけでは、地域経済は守り切れない。
取引先支援のためにも、自行の経営基盤や収益力の強化は欠かせない。デジタル化を進め、効率化を図るなど、コロナ禍を契機にスピードを上げて自己変革に取り組んでもらいたい。全国で新型コロナウイルス感染が急拡大しており、飲食・観光業などサービス業は厳しい状況が続く。一段落した資金繰り支援が再び必要になることもあり得る。2020.11.27
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