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社説 異例TOBの行方を注視

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 SBIホールディングス(HD)が株式公開買い付け(TOB)による新生銀行の連結子会社化に動きだした。現経営陣の刷新を求めるSBIHDに対し、新生銀は買収防衛策を講じる構えを見せており、先行きは不透明な様相だ。両者のもつれた関係に起因するにせよ、銀行を巡る初の敵対的買収に発展する可能性があり、業界に大きなインパクトを与えている。攻防の行方を注視したい。
 SBIHDが事前の賛同を得ない異例のTOBに踏み切った理由に、新生銀のガバナンス強化がある。業績や経営計画の未達などに対し現経営陣への不満を表明した。「第4のメガバンク」構想を掲げて8地域銀行と資本提携する同社は、新生銀をその中核に据えることで一層の企業価値向上を目指すとみられる。
 仮に実現すれば提携する地域銀の地元に対し、ストラクチャードファイナンス(仕組み金融)など新生銀が強みとする高度な金融サービスを提供することも可能となろう。人材交流によるノウハウ共有も図れる。TOB成立後、どうシナジー効果を高めていくのか。今後の具体的な成長戦略が注目される。
 事業会社が銀行株の20%以上を保有して主要株主になるには金融庁の認可が要るが、今回のTOBでは認められた。公的資金回収の早期実現性が高まることが背景にあるとみられるが、同行の経営改革を促すSBIHDにそのお墨付きを与えた。新生銀がTOBに反対する場合は、株主に対し同社の提案以上に納得性の高い収益改善計画を示す必要が出てこよう。
 もっとも、対立が先鋭化することで、新生銀の社内を動揺させ従業員のモチベーション低下や取引先の不安を招く事態は避けなければならない。株主価値を高める「資本の論理」はそうしたリスクをはらむもろ刃の剣でもある。2021.10.1


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