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社説 人への投資に向き合う春闘に

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 政府が「成長と分配の好循環」実現に向け、経済界に今春闘でも賃上げを求めている。消費者物価は上昇傾向にあるだけに、金融界も従業員の実質賃金が低下しないよう前向きに取り組んでほしい。ただ、業績の回復度合いには差があるほか、オミクロン株の流行で不透明な環境下、一律的な賃上げは難しい情勢だ。賃金面以外の処遇改善も含め、労使ともに従業員のモチベーションをどう高めるか議論を深めてもらいたい。
 岸田文雄首相は好業績企業に3%超の賃上げを期待する、と要請した。金融界では大和証券グループ本社や明治安田生命保険が賃上げ方針を表明。全国労働金庫労働組合連合会は2年ぶりに賃金改善を統一要求する。賃上げ促進税制拡充も追い風に、業績が持ち直してきた金融機関を中心に給与引き上げの流れを作ることが期待される。
 もっとも、堅調だった銀行界の2021年9月期決算は与信コストの減少要因が大きく、本業収益はなお厳しい。地域金融機関ではOHR(経費率)改善へ人件費抑制圧力もかかる。また、長引くコロナ禍で取引先企業の中には苦境が深まっており、「ベア要求をしづらい」(地銀労組)事情もあり、従組は難しい判断を迫られよう。
 だが、仮に賃上げ要求が厳しい状況になっても、コロナ禍への対応や業務効率化による生産性向上に取り組む従業員に報いる姿勢は必要だ。例えば臨時給与や手当の拡充などによる総合的な年収引き上げ、ジョブ型雇用など働き方の変化を踏まえた処遇改善などは進めるべきだ。
 企業の持続的成長へ「人への投資」をどう充実させるか。今春闘は例年に増して注目されよう。従業員の意欲や能力を高めるための環境整備は長期的な視点で取り組む必要がある。労使は現状と課題にじっくりと向き合ってほしい。2022.2.4


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