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社説 四半期開示議論は慎重に

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 金融庁は2月18日、金融審議会(首相の諮問機関)の作業部会で、企業に義務付けている四半期開示を緩和すべきか議論を始めた。岸田文雄首相が昨年の自民党総裁選出馬時や首相就任後の所信表明演説で、「四半期開示の見直し」を掲げたのが発端だ。金融庁はこれまで、市場の透明性を高めるために投資家向けの情報開示を充実させる手だてを講じてきており、従来の施策とは逆行する問題提起が議論の出発点となる。首相官邸の意向が自由闊(かっ)達(たつ)な議論の「くびき」とならぬよう、真の国益を見据えた熟慮を望みたい。
 岸田首相が意図するのは、3カ月ごとに業績の公表を迫られる四半期開示が、投資家や企業の短期的利益志向を助長しているとの懸念だろう。ただ欧米諸国と比べ、国内企業の開示内容は見劣りするとの指摘も多い。今回の見直しが開示姿勢の後退と受け止められれば、海外からの投資が鈍る恐れもある。現状、日本株の売買は外国人投資家が約7割を占める。経済のグローバル化が進むなかで海外の資金を引き寄せるには、政権担当者や制度設計者が国際的視野を欠いてはならない。
 一方で、企業にとって情報開示の負担が大きいのも事実だ。証券取引所の規則に基づく四半期決算短信に加え、14年前からは金融商品取引法に基づく四半期報告書の開示も義務化された。後者は監査法人のレビューを受ける必要があり、虚偽記載に対する罰則もある。過度な負担の軽減と不正防止のバランスを探りながら、両者の一本化や重複部分の排除など開示内容の簡素化を検討する余地はあろう。
 ただ議論の時間は限られる。金融庁は今春をめどに報告書を取りまとめる予定で、数カ月間の審議となる。市場運営や金融実務に詳しい有識者を集めた作業部会だけに、政治的意図とは距離を置いた慎重な判断を期待したい。2022.2.25


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