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社説 金融庁は「二正面作戦」遂行を

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 金融庁は8月31日、2022事務年度(22年7月~23年6月)の金融行政方針を公表した。当局として当該年度に「何をするか」を網羅的に記載した対外文書だ。今年度の表題は「直面する課題を克服し、持続的な成長を支える金融システムの構築へ」。課題山積の金融界の現状を映すように、記載テーマは多岐にわたる。その中でも、計画の実現に向けて同庁の力量が問われるのが「国民の安定的な資産形成」を促す施策である。
 柱となるのは、個人投資家向けの税制優遇制度であるNISA拡充と、国民への資産運用提案をなりわいとする金融機関に顧客目線の行動を求めること。前者は税制改正を差配する税務当局や与党との難交渉が予想され、後者は低収益にあえぐ銀行に対して自らのもうけよりも顧客利益の優先を強いる難しさがある。
 この二正面作戦は従来と変わらぬ構図だが、今年度は追い風がある。NISA拡充は、岸田政権が年末に策定する「資産所得倍増プラン」の中心的な施策に位置付けられた。税収確保の使命を負う財務省の軟化は容易でないが、時限措置であるNISAの恒久化や、複雑な制度内容を簡素化する好機としてほしい。
 金融機関に対する検査・監督では、仕組み債の販売に目を光らせるという。特に地域銀行系証券は販売手数料の高い仕組み債がビジネスの中心になっていると指摘。対象先の経営陣には「取り扱いを継続すべきか否か」について意見聴取する姿勢を明示した。
 金融庁は、利幅の大きいリスク商品の販売に金融機関が注力するたびに注意喚起を繰り返してきた歴史がある。今回の金融行政方針では地域銀の多くが金融商品販売を含むリテールビジネスで赤字という調査結果も示しており、その課題を克服しない限り「いたちごっこ」が続きかねない。簡単に答えが出る問題ではないが、持続可能なビジネスのあり方について建前を排した官民の対話を期待したい。2022.9.9


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