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社説 次代への足場を固める1年に

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 2023年の金融界は、事業環境が大きな変化に直面する。既存の預貸業務に影響を及ぼす法制度の見直しが相次ぐほか、日本銀行の総裁交代が予定され、10年間に及ぶ異次元金融緩和政策が転機を迎える。「非財務情報」の開示も本格化。こうした環境変化や社会的要請を、事業の持続可能性を高める契機にしたい。
 預金業務にインパクトがあるのは、4月解禁のデジタル給与払い。銀行を介さず資金移動業者に給与を送れる。若年層などとの接点がさらに薄まりかねず、給与口座の付加価値を高める必要がある。融資面では中小企業の経営者保証が制限される。保証に依存しない新規融資は3割どまりで、事業性評価の徹底による融資慣行の打破が急務だ。
 日銀総裁の交代で金融政策の修正も進む見通し。株式市場では金融機関の増益期待から銀行株は上昇基調にあるが、リスクに応じた適正な貸出金利を確保する体制を作れるか真価が問われる。一方、余資運用で円債保有を増やした地域金融機関は金利上昇で評価損拡大の恐れもある。リスク抑制に手を打つべきだ。
 金融庁は、3月期の有価証券報告書で人的資本の開示を義務化、男女間賃金格差などの可視化が求められる。気候変動対策の開示も国際基準の公開草案をベースにルール作りが進む。財務データにとどまらない幅広い経営情報を適切に発信し、投資家や顧客に選ばれる企業を目指したい。
 物価高が続くなか、3月中旬から春闘が本格化する。銀行界では「社員に安心感を与えるため賃上げは不可避」(大手行幹部)との声が多い。労使で納得感ある賃上げを実現し組織の活力を高めたい。
 今年は日本最初の銀行「第一国立銀行」(現みずほ銀行)設立から150年の節目。創業者の渋沢栄一は「元気振興の急務」との言葉で、現状に満足せず前に進むことの大切さを説いた。金融界は次の時代を切り拓くための足場固めの1年にしてほしい。2023.1.13


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