社説 変革に挑み、確かな成長軌道へ
2026年が始まる。金融界に期待されるのは日本経済が乗り始めた新たな成長軌道を確かなものにするための後押しだ。政策金利は26年中の1%到達が見えてきた。従来慣行を大きく変える法律も施行される。各金融機関が変革に果敢に挑戦し、自らも成長力や持続可能性を高めていかなければならない。取引先と一緒に成長し、失われた30年でなくした日本経済の自信を取り戻す1年としたい。
成長資金供給へ、積極的な取り組みが期待されるのが5月に施行される事業性融資推進法だ。将来キャッシュフローを含めた事業全体を担保とする企業価値担保権が創設され、物的担保は乏しくても成長が見込めるスタートアップなどへ融資しやすくなる。
企業価値担保権を活用した融資では、成長性を見極める「目利き力」の重要性が増す。1行取引が合理的となり、融資先の成長を責任持って支える覚悟が試される。実務上の難しさはあろうが、怯(ひる)まず挑んでもらいたい。
1月1日に中小受託取引適正化法(通称=取適法)として施行される改正下請け法も取引先支援に生かしたい。取適法では下請け企業が適切に利益を上げられるよう受託者の利益保護が強化され、国内産業のあり方が変わる。金融機関の生産性を高める支援と合わせれば、中小企業の持続的な賃上げや地域経済の活性化もみえてこよう。
金融機関経営では、安定した預金確保の重要性が一層高まる。24年3月のマイナス金利政策解除以降、預金獲得競争が激化し、預金減少に直面する地域金融機関は少なくない。容易に他へ移されない粘着性の高い預金を増やしていくには、積み上げてきた信頼だけでなく、ニーズに合ったチャネル提供が必要だ。
金融庁が25年12月に公表した地域金融力強化プランには、地域の持続的な発展には地域金融機関の役割発揮が欠かせないとの認識が盛り込まれている。そのうえで、急速に進む人口減少を踏まえて、どう経営していくかを問いかける。人口減少は、預金だけでなく、貸出にも影響してくる。さまざまな可能性を考慮し、合併・統合も排除せず、地域と自金融機関の持続可能性向上につながる道を選択しなければならない。
競争力・収益力強化には社会実装が加速するAI(人工知能)の活用が不可欠だ。金融庁は25年3月に公表したAIディスカッションペーパーで、「技術革新に取り残されて中長期的に良質な金融サービスの提供が困難になる『チャレンジしないリスク』も十分に認識されるべき」と指摘した。AIを活用して業務や働き方、企業文化を変えていくAIトランスフォーメーションが求められる。2026.1.1
ニッキンのお申し込み
ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。
申込用紙をFAX(03-3237-8124)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。


