2024年1月12日号8・9面 特集 「顧客本位」阻むジレンマ もぐら叩きに”終止符” 改正法施行が転機に
不祥事が続いた2023年の金融界。千葉銀行など3社による仕組み債の不適切販売やビッグモーターによる保険金不正請求問題をひも解くと、収益確保が至上命令となっていた実態が浮かび上がる。金融庁が「顧客本位の業務運営に関する原則」を定めてから6年以上が経つものの、いまだに金融庁と販売会社の間でリスク性金融商品の販売を巡る“もぐら叩(たた)き”が繰り返されている。顧客本位を阻むものは一体何か。その実情を探ると、金融機関が抱えるジレンマがみえてきた。(高野豪、倉田憲多)
■目標必達の空気不変
金融機関の営業現場では、顧客本位の業務運営原則に沿った取り組みよりも…
2024年1月12日号7面 やさしいニュース解説 なぜ売れてるの?「外貨建て保険」
今年は米国利下げで逆風も
「外貨建て一時払い保険」は、銀行による預かり資産営業の現場で、ポピュラーな金融商品の一つです。外国通貨で保険料の払い込みや保険金の受け取りを行う、貯蓄性の高い生命保険を指します。最近は、基軸通貨の米ドル建てが人気です。本紙が地域金融機関を対象に2023年度上期の販売実績を調査したところ、保険商品の銀行窓口販売(窓販)で最大の販売件数を占める一時払い終身保険商品のうち、約8割を外貨建てが占めました。売れ行きが好調な理由は、米国の利上げに伴って商品の魅力が増したからです。その一方で、外貨建て商品には為替リスクがあるので、為替相場によっては損をすることもあります。外貨建て保険を買う際の留意点や、今後の販売見通しについて解説します。
■そもそも、なぜ銀行が保険商品を販売しているの?
銀行が保険商品を売れるようになったのは、国が規制を緩めたからです。保険業法の改正により、…
【写真】銀行窓販といえば外貨建て一時払い保険商品がメインとなるほどに発展した
2024年1月12日号11面 特集 考察「マイナス金利」 引くに引けず8年 限界露呈、仲介機能削ぐ
「解除」を視野に入れた議論が出始めた日本銀行のマイナス金利政策。2016年1月29日の導入決定から丸8年が経とうとしている。イールドカーブ(利回り曲線)の起点である短期の政策金利をマイナス圏に沈み込ませる非伝統策は、すでに低位だった金利水準を一段と押し下げ、政策効果に見合わない金融機関収益の悪化など多くの弊害を生んだ。異例の政策手段の長期化は、地域銀行や信用金庫の財務を金利変動に脆弱(ぜいじゃく)な構造に変え、ショック時に「取るべきリスクを抱えられない」といった先々の金融仲介機能の副作用を膨らませた。(多田弘樹)
「引くに引けない状況が続いた」――。ある日銀幹部は、長期化するマイナス金利政策の実情を口にする。
解除しても…
2024年1月12日号10面 特集 3メガバンクの社内インフルエンサー、巻き込み力で“新風”起こす
社内SNS(交流サイト)などを活用し、社員の行動変容に影響を与える「社内インフルエンサー」。3メガバンク(グループ)が組織変革を進めるなか、その中心的役割を担う人材が相次いで誕生している。自身の活動などを発信し、その思いに共鳴した社員と組織に“新風”を巻き起こす存在だ。3メガの社内インフルエンサーに活動内容や今に至るまでの経緯などを聞いた。
■三菱UFJ銀行 大阪営業第四部・大林 純平調査役、もっと面白い組織に
「MUFGをもっと面白い組織にしたい」。現在、大手製薬会社を中心に約300社を担当しながら、銀行の枠を超えた…
【写真】(左から)大林 純平・三菱UFJ銀行 大阪営業第四部調査役、杉本 秀和・SMBC Wevox代表取締役社長、帯向 恵理香・みずほフィナンシャルグループ コーポレートカルチャー室調査役
2024年1月12日号12面 特集 現物資産をトークン化、地銀・“ローン裏付け”組成へ
現物資産を裏付けとしたセキュリティートークン(ST)が、個人の新たな投資商品として注目を集めている。銀行界では高額資産を低コストで小口化できる利点を生かし、投資マネーを呼び込みたい考え。足元、裏付け資産の9割以上を不動産で占めるが、地域銀行で自行融資のST化を検討するなど投資対象資産も多様化しそうだ。ST市場の最新動向や金融機関ビジネスの可能性に迫る。
■エンタメとコラボ狙う
STの販売で先行するのはソニー銀行だ。2023年7月、投資用マンションローンの一部をオフバランス化し…
2024年1月12日号15面 特集 携帯大手が描く“金融像”、主戦場は「資産形成」に
キャッシュレス決済で顧客を囲い込んできた携帯大手3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)が、戦いの舞台を「資産形成」に移す。少額投資非課税制度(NISA)の拡充・恒久化で潮目が大きく変わったからだ。1月にスタートした新NISA需要を取り込み、1千万人を超える規模の潜在的な投資家層をいかに開拓するか。携帯大手3社が描く金融サービス像を探る。
■巨人・ドコモ、証券参入
「マネックスグループと資産形成の世界を変えていく」。NTTドコモの井伊基之社長は2023年10月のマネックスグループとの資本業務提携に関する会見で意気込みを語った。dポイントクラブ会員数…
【写真】会見に臨んだNTTドコモの井伊基之社長(中央左)、マネックスグループの松本大会長(中央右)ら(2023年10月4日、東京都内)
2024年1月12日号18面 都銀4行の営業最前線、多彩なコンサル機能で課題解決
みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行の営業店では、グループや信託併営を持ち味に多彩なコンサルティング機能で法人や個人の課題・悩みの解決に注力。オーナー経営者の事業承継や富裕層の不動産取引などに最適な処方箋(せん)を示し、顧客からの信頼獲得を通じて複合取引に発展するケースも相次いでいる。
■みずほ銀行吉祥寺支店、グループ不動産会社を活用、富裕層の相続対策に尽力
みずほ銀行吉祥寺支店(柴田昭彦支店長=行員102人うち渉外担当33人)は、地権者が多い全国有数の富裕層市場を持つ。銀信証にグループの不動産会社の…
【写真】定期的に営業情報を共有し、適切なソリューションを検討している(2023年12月15日、みずほ銀行吉祥寺支店)