2023年3月17日号2面 実像 商工中金、脱“半官半民”へ、金利追わず独自路線を確立
商工組合中央金庫の完全民営化が近づいてきた。2016年に危機対応融資の不正事案が発覚後、関根正裕社長の下でビジネスモデルを変革。事業性評価をもとに、民間金融機関との金利競争にとらわれない新たなスタイルを確立した。3月10日には、政府保有株式の全株売却や業務範囲見直しなどを記した株式会社商工組合中央金庫法を含む改正法案が閣議決定され、今国会に提出された。“半官半民”からの脱却を進める商工中金の姿を追った。
■国会に法案提出
「いやあ、長かったねえ」――。3月2日、自民党内で開催された経済産業部会と中小企業・小規模事業者政策調査会の合同会議後、ある議員が漏らした。
同会議では…
【写真】自民党の経済産業部会と中小企業・小規模事業者政策調査会の合同会議において、商工中金法を含む改正法案の条文審査が実施され、党内で了承を得た(3月2日)
2023年3月17日号3面 シリコンバレー銀が破綻、米財務省など「全預金保護」
FRB(米連邦準備制度理事会)の急速な金融引き締めが続くなか、米銀の健全性への懸念が強まっている。シリコンバレーバンク(SVB)は3月10日(現地時間)に経営破綻し、同12日にはシグネチャーバンクが事業を停止した。3月8日にシルバーゲートバンクが自主清算を公表していたなかでの2行の破綻を受け、FRBは新たな資金供給制度を創設。バイデン米大統領も緊急会見で「預金の全額保護」を訴えるなど、金融システム不安の払拭(ふっしょく)に国を挙げて取り組む姿勢を示した。
SVBの総資産(2022年末)は、約2090億ドル(28兆円)、預金は約1750億ドル(23兆円)。FDIC(連邦預金保険公社)は管財人として預金者保護の措置を取った。
同行は…
【写真】米シリコンバレーバンク破綻のニュースを受け、世界的に銀行株が売られた(写真はニューヨーク証券取引所)
2023年3月17日号5面 三菱UFJ信託銀行、他部署先輩と1オン1、メンター200人が若手育成
三菱UFJ信託銀行は、社員の成長と挑戦を支える施策を展開する。上司との1オン1ミーティングに加え、他部署の先輩社員と1オン1で相談できる「メンター制度」を実施。さらに「挑戦」を評価する報酬制度も採用する。コロナ禍で低下した職場コミュニケーションの回復と若手社員のキャリア形成をサポートする。
メンター制度は、所属部署とは異なるラインのロールモデル的な先輩社員がサポートする。導入した2021年度は…
2023年3月17日号7面 七十七銀行、信託業務に本体参入、遺言信託は年150件目標
【仙台】七十七銀行は3月3日、信託業務の兼営認可を取得し、4月1日に東北地区の全営業店で信託業務を開始する。これまで14カ店と本部担当部が信託代理店となって専業信託銀行に取り次いできた。遺言信託の取扱件数は初年度で約30件。徐々にノウハウを習得し、将来的には年間150件を目指す。信託業務の本体参入は、東北では東邦銀行に次いで2行目。
業務開始時の信託商品・サービスは、遺言信託、遺言整理業務のほか、…
2023年3月17日号8面 全信協、風水害BCP見直しへ、全国でワークショップ
全国信用金庫協会は、7月までに地区別のワークショップを開催し、全国の信用金庫に対して自然災害時の業務継続計画(BCP)の見直しをサポートする。9回に分けて実施し、全国254信金の約半数が参加する見込み。
3月2日に大阪、同8日に東京で先行開催した。残り7回は5~7月に北海道、…
【写真】BCPワークショップではグループディスカッションを通じて参加信金の好事例を共有する(3月8日、東京都内)
2023年3月17日号18面 北海道銀行、全法人担当にDX研修、取引先支援へ外部講座導入
設計・予算など提案法学ぶ
【札幌】取引先や地域へのDX(デジタルトランスフォーメーション)普及に貢献しようと、北海道銀行は、外部研修プログラムを導入し、サポート力を向上させている。2022年11月~23年3月に、役席者を含む法人顧客担当全394人が受講。ITの基礎知識のほか、DX環境の構築・導入設計、予算策定など、企業支援のポイントを習熟し、DX化提案を拡充する。
DX案件に対し、営業店など現場で対応・提案できる体制を充実する狙い。導入したのは、…
2023年3月17日号16面 特集 【読者の意見】脱・経営者保証について、5割が「評価する」
懸念はモラルハザード
脱・経営者保証の流れが進んでいる。金融庁は監督指針を改正し、4月から保証の必要性や解除の方法を説明し、記録に残すことを金融機関に求める。3月15日に、経営者の個人保証を不要とするスタートアップ創出促進保証制度(SSS保証)の取り扱いも始まった。脱・経営者保証の評価や、企業の成長に与える影響、副作用などについて聞いた。
■Q1.脱・経営者保証の流れを評価しますか
「評価する」が最多の48%となった。「ガイドラインに沿った脱経営者保証を行っている」(第二地方銀行60代)や…
【写真】SSS保証を説明した宮城県信用保証協会の「みやぎ中小企業支援ネットワーク会議」(2月22日、宮城県信保協)
2023年3月17日号17面 地方信金を支える信金中金
信用金庫の中央金融機関である信金中央金庫の役割は、会員である全国254信金をサポートすること。東京の本店以外にも国内に12支店を置き、各地区の信金をさまざまな面で支えている。個別信金との窓口になるのが各支店の担当者であり、若手職員はコンサルティング業務や信金への出向などを通じて現場感覚を学ぶ。北海道支店、静岡支店、大阪支店に勤務する若手・中堅職員3人への取材を通じて、信金中金がどのような形で地方信金を支えているのかを探った。
■静岡支店、先を見て事前準備徹底
【静岡】静岡支店の担当者は、役職者が担う静岡県内信用金庫のコンサルティング業務と後輩職員のサポートに力を注ぐ。なかでも…
【写真】静清信用金庫の職員らに、信金中金本部が作成した「SDGs啓発リーフレット」について説明する担当者(中央、2月21日、kyoten)
2023年3月17日号20面 埼玉県信金秩父支店、マッチング支援、廃棄副産物から新飲料誕生へ
協調融資3000万円実行
埼玉県信用金庫秩父支店(小野田明支店長=職員10人うち渉外4人。パート1人、契約2人)は、さいしんコラボ産学官などと組んで地元企業のマッチングを支援している。チーズ製造時の副産物「ホエイ」を使った飲料、B級グルメ「みそポテト」のパン開発をサポートした。資金需要を創出し2022年12月末の事業性融資は、同年3月末対比で約1億4500万円(2.37%)増の62億3800万円となった。
2022年2月に着任した小野田明支店長は、顧客の利益になることを先にすれば利益は後からついてくる「先義後利」を基本方針に掲げ…
【写真】ホエイの原料となる牛乳を生産する酪農業者の現状を聞く小野田明支店長(右から3番目、2月21日、ちちぶ路吉田牧場)
社説 急がれる金利リスク耐性強化
米国のスタートアップ企業向け融資大手のシリコンバレーバンク(SVB)が3月10日、経営破綻した。急増した預金を長期の債券で運用していたところに、急速な利上げが直撃。多額の含み損を抱えたことで、信用不安から預金流出を招き破綻に至った。金利上昇がもたらす保有債券の損失は日本の金融機関にも通じる問題だ。今回の破綻を教訓に、金利リスク耐性の強化を急ぐ必要がある。
SVBは株式で資金調達を拡大したスタートアップの余剰資金を預金として受け入れ、2022年末時点で預金残高は約1750億ドル(約23兆円)まで膨らんだ。その運用先が償還期限の長い住宅ローン担保証券(MBS)や米国債。だが、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げで損失が拡大。長短金利が逆転する「逆イールド」も進み、収益へのマイナス影響が強まった。
総資産の約6割を長期債に投資する極端な運用ポートフォリオで、金利リスク管理に問題があったのは確かだ。ただ超低金利下、余剰資金を有価証券運用に傾注してきた国内金融機関も内外金利上昇で同じく逆風を受けている。
特に地域銀行や信用金庫では海外金利上昇による外国債券の含み損問題に加えて、円債の金利リスクも浮上。日本銀行の異次元緩和政策が修正・正常化に向かえば、評価損益の悪化が一段と進む。特に地域銀では地方債の保有残高が20兆円に迫り、債券デュレーションも大手行に対して長期化傾向にある。
難局に対処するには、含み損を抱える債券売却などの早期対応とともに、運用体制の立て直しが急がれる。例えば、運用方針を単年度から複数年度ベースに切り替えれば、中長期的に収益計画を描ける。また、リスク管理高度化に向けた「リスク・アペタイト・フレームワーク」の活用や、運用人材の育成・確保も欠かせない。経営陣が従来以上に積極関与し、持続的な運用戦略を構築する契機としたい。2023.3.17