2023年8月18日号2面 実像 「上場意義」問うPBR1倍割れ、万年割安・銀行株に変化の兆し
万年割安株と言われる銀行の株価。日本銀行によるイールドカーブ・コントロール(YCC)修正を受け、年初来高値の更新が相次いだが、依然として株価純資産倍率(PBR)は解散価値を下回る1倍割れの状態が続く。マイナス金利政策のもとで低収益環境は当面、継続するものの、東京証券取引所の要請を受け、大手行や地域銀行(グループ含む)は改善に動き始めた。PBR改善は唯一の解が存在せず、各行が自身の成長へ自問自答することが欠かせない。問われるのは外部環境に頼らず、中長期的に企業価値を向上させるサイクルの定着だ。
■金利変動で揺れる株価
5月から7月にかけ、各行が開示したIR(投資家向け広報)資料や統合報告書には「PBR」「資本コスト」などへの言及が相次いだ。長年にわたり銀行界を分析してきたピクテ・ジャパンの大槻奈那シニア・フェローは…
2023年8月18日号4面 都銀の実質預金4.5%伸長、地域銀・ゼロゼロ返済で鈍化、一部で法人獲得に動く
実質預金の増加率の差が都市銀行5行と地方銀行・第二地方銀行の間で開いている。全国銀行協会の統計によると、都銀は2023年7月末に前年同月比4.5%増加し、22年7月から0.9ポイント上昇した。大企業の預金増加が一因とみられる。一方、地銀62行は同1.4%増(前年同月比2ポイント減)、第二地銀37行は同1.3%増(同0.7ポイント減)にとどまった。実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資の返済に伴う中小企業の預金減少が響いた。
都銀5行の伸び率が4%台に乗せるのは4月以降で3回目。22年度は11月末だけで、…
2023年8月18日号7面 地域銀行2023年4~6月期決算、純利益は前年同期比9%減
海外金利動向が足かせに
地域銀行の2023年4~6月期決算が8月14日までに出そろった。地域銀78グループ(G)・行の連結純利益は、海外の金利上昇(債券価格は下落)に伴う有価証券ポートフォリオの再構築で損失計上したことなどが響き、前年同期比9%減の3528億円となった。本業のもうけを示すコア業務純益(単体、投資信託解約損益除く)は中小企業向け融資や住宅ローンが堅調な一方、有価証券利息配当金の減少などが影響し同14%減の4011億円だった。
地方銀行55G・行、第二地方銀行23G・行を集計した。連結純利益が減益となったのは、…
2023年8月18日号8面 信金、サステナビリティ・リンク・ローン取り扱い加速へ、信金中金がサポート施策
信用金庫は、取引先の脱炭素化に向けて、サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)の取り扱いを加速させる。現在、独自の枠組みで商品を扱っているのは、浜松いわた信金と岐阜信金だが、信金中央金庫が8月8日に、格付投資情報センター(R&I)と連携した組成サポートを開始した。7月下旬に周知したところ、すでに10信金以上から問い合わせが来ている。
SLLは、企業の事業活動における二酸化炭素(CO2)排出量の削減をはじめとした目標の達成に対して、…
2023年8月18日号10面 日証協、外務員資格の更新電子化、2025年に完全オンラインに
研修内容も拡充
日本証券業協会は、12月下旬から外務員の資格更新研修をオンラインで受講可能にする。1年間は指定会場での受講も受け付けるが、2025年1月に完全オンライン受講へ一本化する方針だ。協会員の要望に応える。仕組み債の販売勧誘に関するガイドラインの改定などを踏まえ、研修内容も拡充する。
現行は指定会場での「eラーニング」形式を採用している。12月以降は会社や自宅からオンラインで受講できるようにし、…
2023年8月18日号18面 農林中金、1オン1システム好評、全職員の7割活用
農林中央金庫で、上司と部下の1オン1を支援するシステム「Kakeai(カケアイ)」の活用が広がっている。足元で、3300人を超える全職員の約7割が利用し、うち85%以上から肯定的な意見が寄せられた。2023年度から全社導入した同システムは、面談テーマの事前設定や相談内容の振り返りなどをサポートするもの。今後は、部支店ごとのシステム利用率を開示するなどして、さらなる活用を促す。
農林中金における1オン1の位置づけは「部下の成長のための時間」(人事部)だ。同システムでは選択肢のなかから、…
【写真】1オン1は個室やオンラインなどのプライベートな空間で実施する(8月10日、本店、提供)
2023年8月18日号16面 特集 【地域にスポット】秋田県内金融機関、CO2排出実質ゼロに挑む
再エネ・省エネ店舗広がる
【仙台】秋田県は、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーの導入を積極的に進め、「日本一の新エネ供給基地」を目指す。県内金融機関は、これら発電所の建設に投融資しながら、自身も「二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロ」へ邁進(まいしん)する。再エネの活用や消費エネルギーの省力化など、各金融機関の取り組み状況と効果を取材した。
■使用電力は自分でつくる
秋田県信用組合は、「自分たちが使う分は、自分たちでつくる」(北林貞男会長)との思いで、営業店への太陽光パネルと…
【写真】秋田県信組土崎支店は、晴天時の発電量が消費量を上回りEV用の蓄電もできる。太陽光パネルの普及促進を図るため、発電量と消費量が来店客に見えるようにしている(5月31日、秋田市)
2023年8月18日号19面 フィッシング詐欺急増、金融庁が注意喚起を強化、2023年上半期は過去最多に
金融庁が、インターネットバンキング(IB)の不正送金被害の急拡大を受け、注意喚起を強めている。警察庁によると、2023年上半期(1~6月)に2322件(暫定値)の被害が発生。2012年以降の半期単位で過去最多となった。被害の多くがフィッシング詐欺とみられる。
フィッシング詐欺は、IB利用者のIDやパスワードなどを盗み取り、預金を不正送金させる詐欺の一種。1~6月の不正送金被害額は…
2023年8月18日号20面 中国銀行奉還町グループ、エリア特性、“花形は個人営業”を共有
情報交換会議の運営工夫
【広島】中国銀行奉還町グループ(奉還町、法界院、津島、津高各支店、高柳出張所、青木信浩奉還町支店長=行員52人うち法人渉外10人、個人渉外23人。パート40人)は、岡山県内屈指の個人マーケット、岡山市北部エリアの個人営業に注力している。預かり資産営業の専担者を中心に3人一組で情報交換する会議を毎週開催。一体感を高めて2022年度下期は個人営業部門でグループ表彰を受けた。
中国銀行は2022年10月から自主目標制度を導入。各地域のマーケットに合わせた活動を展開している。
営業エリアは岡山駅に近い住宅街で…
【写真】毎週木曜日に開く法個連携ミーティングで活発に意見交換する行員(8月3日、中国銀行奉還町支店)