2023年9月15日号2面 【実像】金利正常化「前夜」(下)利上げ交渉、問われる関係性
「預けるときも借りるときも低金利」という国内金融の世界観が転換しつつある。金利上昇は金融機関にとって長期的に収益メリットが大きい。一方、提供サービスの差別化などが進んでいない先にとっては、高金利預金の提示による顧客つなぎ留めなど資金調達コストの意図せぬ増加になりかねない。貸し出しでも条件更改のタイミングで、先々の金利情勢を見据えた難度の高い「利上げ交渉」が営業現場で待ち構える。経験の乏しい金利の上がる時代を意識した「行動」に本腰を入れる場面に差し掛かった。
■「価格」が映す“横並び”
日本の金融業を象徴する統計データがある。振込手数料に代表される国内の金融サービス価格だ。他の先進国に比べ…
【写真】上昇基調にある長期金利は9月11日、9年8カ月ぶりに一時0.7%台をつけた(東京都中央区)
2023年9月15日号4面 銀行業、PBR改善策・開示率7割、1倍割れ是正へ積極姿勢
プライム平均上回る
東京証券取引所は3月の「資本コストや株価を意識した経営」実現に向けた要請を踏まえ、3月期決算企業の改善策開示状況をまとめた。検討中を含むプライム市場上場企業(1235社)の開示率は31%(7月14日時点)にとどまった。一方、業種別でトップだった保険業(71.4%)に次ぎ、銀行業は70.6%で他業種に比べ高い。解散価値を下回るPBR(株価純資産倍率)1倍割れの状態が長期間にわたって続いており、是正へ取り組みなどの開示に積極姿勢が見られている。
PBR1倍未満かつ時価総額が1千億円以上の企業の開示率は45%と相対的に高い傾向にある。銀行業は上位だが…
2023年9月15日号5面 みずほFG、データ主導の人事運営へ、若手にキャリアパス示す
退職予兆検知ツールも
みずほフィナンシャルグループ(FG)は“データ主導”の人事運営に移行しつつある。これまで十分に活用できていなかった人事データをもとに、若手社員のキャリア支援や適材適所の人材配置、退職抑制に生かす。すでにグループ横断的に人事データを活用できる体制を整え、社員の退職予兆を検知するツールを現場に導入した。
みずほは、2024年度からグループ5社共通の新人事制度を導入する。新制度では「社員の成長、ビジネス戦略に応じた機動的な人材配置」を掲げ、…
2023年9月15日号7面 大垣共立銀行、「健康口座」会員1万人めざす、地域課題解決へ積極展開
【名古屋】大垣共立銀行は、「健康口座」サービスを積極展開していく。将来の医療・介護費を積み立てる専用口座や医療費の立て替え払いなどを提供するサービスで、医療費負担のあり方が社会課題となるなか、解決策の一手として提案。2023年度中に会員1万人を目指す。
健康口座は、日本メディカルビジネスなどと健康生活応援商品として21年11月に取り扱いを開始。提携医療機関を受診時に医療費を専用口座から後払いできる立て替え払いや、…
2023年9月15日号10面 大手証券、生成AIの活用探る、大和は翻訳業務を一部代替
大手証券会社で、業務効率化へ生成人工知能(AI)の活用が広がってきた。セキュリティーに配慮した環境を整え、部門を問わず幅広く利用を促して新たな活用方法を探る。大和証券は一部の外部委託業務を置き換えるなど、導入半年で成果が見えてきた。
大和証券は4月に情報が外部に漏れない環境でチャットGPT導入後、当初3カ月の利用者は社員約9千人の1割程度で、一日平均の利用件数は4千~5千件に上った。経営企画部など…
【写真】チャットGPT回答例の一部抜粋(大和証券提供)
2023年9月15日号18面 北陸銀行、「お試しインターン」実施、支店行員が本部業務体験
【金沢】北陸銀行は、2023年度から本部業務を体験する「お試しインターン・シップ」を実施している。最長5日間の体験を通じて、営業店に勤務する行員のキャリアを支援する。1カ月の試行期間を経て、4月に本格的に始めた。勤務地や年齢、職位などを問わない公募制。応募者は希望の部署で3~5日間、業務に従事する。
これまでの希望者は85人。経営企画部や国際部など12部署のほか、…
【写真】行内報の内容について話し合う参納主任(左)と田村さん(中央)、経営企画部広報CSRグループの寺田正博調査役(8月31日、本部)
2023年9月15日号11面 特集 「新NISA」始動、運用会社トップに聞く
資産運用立国へ役割大きく
「2000兆円の家計金融資産を開放し、持続的成長に貢献する『資産運用立国』を実現する」――。政府は6月に閣議決定した“骨太方針2023”にこう明記した。金融業界では、金融資産所得の拡大策として注目される新しい少額投資非課税制度(新NISA)を通じて、家計金融資産の半分以上を占める現預金を株式や投資信託に導く好機到来と沸き立つ。こうした「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、資産運用立国を実現するうえで重要な役割を担うのが資産運用会社。成長投資枠ファンドの商品性や運用力だけでなく、大手銀行や地方銀行、信用金庫といった販売会社が円滑に幅広く商品を提供できるようにニーズに応じたサポートが期待されるからだ。新NISAが始まる2024年1月まで残り3カ月半と間近に迫るなか、運用会社4社のトップに対象ファンドや販売会社の支援、資産運用立国にかける思いなどを聞いた。
【写真】(左から)ニッセイアセットマネジメント・大関洋社長、アセットマネジメントOne・杉原規之社長、フランクリン・テンプルトン・ジャパン・桑畑卓社長、大和アセットマネジメント・小松幹太社長
2023年9月15日号17面 岐阜信金、業界一の環境関連支援、独自商品で存在感発揮
【名古屋】環境関連で業界一の支援機関へ――。岐阜信用金庫(岐阜県、好岡政宏理事長)は、取引先の脱炭素実現に向けた支援に力を注ぐ。独自スキームで構築した信金業界初のサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)とポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)で存在感を発揮。“ぎふしんモデル”で地域の脱炭素化を支える方針だ。
■無二のモデル構築
独自に構築したSLLは、商品のフレームワークで外部評価機関の認証を受けたため、この枠組み内での実行案件については…
【写真】脱炭素経営に関するセミナーなどで地域への啓発に取り組む大野達哉常務(岐阜信金提供)
2023年9月15日号20面 福井銀行福井北部エリア、グループ連携、理解して「課題」を発見
地域密着型コンサル実践
【金沢】福井銀行福井北部エリアの金津、三国、芦原、大聖寺の4支店(行員数45人うち法人渉外14人、個人渉外8人。パート7人)は、グループ会社との連携による地域密着型のコンサルティングを実践する。既存メニューの提案ではなく、相手を理解するところから始め、ともに課題を発見して解決策を探るオーダーメイドの手法をとる。時間と手間はかかるが、取引先企業の評価は高い。
4カ店を統括する金津支店の平田敬三支店長は、同行の営業方針である「理解してから理解される」を…
【写真】営業支援チームのアドバイザー(左から3人目)も交えて意見交換する(9月1日、福井銀行金津支店)