2022年5月20日号2面 実像 スタートアップ支援の現状(上)地域銀行、起業家育成に本腰
先端技術で取引先を支援
「戦後に次ぐ第2創業期を実現するため、2022年を『スタートアップ創出元年』とする」。岸田文雄首相が1月の年頭記者会見で発した言葉に、スタートアップ(SU)業界が色めき立った。政府は6月までに「スタートアップ5カ年計画」を策定する予定だ。近年は金融界でもベンチャーキャピタル(VC)投資やオープンイノベーション促進などの動きが広がっており、政府による支援強化に伴ってさらなる加速が予想される。2回シリーズの初回は地域銀行の取り組みにスポットを当てる。
■市場、10年で10倍
国内SUの資金調達は好調に推移している。ユーザベース(東京都)が運営するSU情報プラットフォーム「INITIAL(イニシャル)」の調査(図表1)によると…
【写真】各賞が記されたパネルを掲げるコンテストに参加した起業家(5月12日・アゴラ静岡会議室)
2022年5月20日号3面 コロナ特例の公的資金、初めて注入へ、官民双方の「緩み」懸念
コロナ特例の公的資金が、きらやか銀行に対して初めて活用される見通しとなった。地域経済を支える効果が見込まれる一方、従来より条件が緩く、経営の規律付けが課題になる。注入を受ける金融機関側の姿勢はもちろん、金融庁の向き合い方も問われることになる。
コロナ特例は、2020年8月の金融機能強化法改正により新設された。通常の公的資金と異なり、収益目標が未達の場合の経営責任を求めず、15年以内としていた返済期限も撤廃した。条件緩和の狙いは…
2022年5月20日号4面 3メガG、22年3月期決算、ロシア関連損失3400億円
取引先への影響懸念
ロシアのウクライナ侵攻により、3メガバンクグループ(G)が2022年3月期決算で受けた損失が、約3400億円規模に上ることが分かった。取引先企業への間接的な影響が広がる恐れも強く、それぞれ引当金を積むなど対応。また、現地拠点の存続やグループ会社のビジネスへの影響にも頭を悩ませる。
ロシア向け与信残高は、みずほフィナンシャルグループ(FG)が29.2億米ドル(約3800億円)、三菱UFJFGが約3100億円、三井住友FGが29億米ドル(約3700億円)。内訳は、3グループともに…
2022年5月20日号5面 三井住友FG、役員報酬に定量ESG評価、気候変動取り組み加速
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、気候変動に対する取り組みを強化する。移行リスクの分析対象に国内で初めて鉄鋼セクターを加えるほか、電力セクターでは温室効果ガス(GHG)排出量の中期削減目標を新規設定した。新たに役員報酬評価に定量的なESG(環境・社会・ガバナンス)評価項目を追加し、経営陣のコミットメントを高める。
ビジネス機会の捕捉とリスク管理の両面から、2021年度の三井住友銀行の顧客エンゲージメントは約6千社と、その前の年度比で約3倍に…
2022年5月20日号6面 七十七銀行、海外情報を適時提供、現地行員による相談も
【仙台】七十七銀行は、海外拠点などに派遣している行員からの現地情報を、サイトを通じて提供している。さらに、海外の行員とオンラインでつなぎ、その国の状況を知りたい法人先への相談対応もしている。コロナ過で制限される海外での活動が、今後活発化すると予想され、対応を強化している。
同行は、中国・上海とシンガポールに駐在員事務所を置き、4人の行員(準備中を含む)が赴任し、取引先の進出支援や貿易、投資、金融などに関する…
【写真】上海駐在員事務所の行員による、ものが売り切れたスーパーの店内を撮影した映像(七十七銀行提供)
2022年5月20日号8面 信金中金、大和証券とファンドラップ、第1号は多摩信金
信金中央金庫は、大和証券と連携した個人向け資産運用サービス「しんきんファンドラップ」のスキームを構築。導入第1弾として多摩信用金庫(東京都)が5月23日に提供を開始する。今後、同証券と協力した各信金への導入サポートを通じて全国展開を目指す。
同ファンドラップは、投資一任契約に基づき、大和証券が信金と取引する個人顧客に対して、投資運用業者として…
2022年5月20日号16面 【地域にスポット】「広域型営業」へ移行
■山形銀行、統括店に戦力集中
【仙台】山形銀行は4月、山形県内の米沢・東置賜地区(5カ店)と酒田地区(5カ店)の全店舗が広域型営業体制に移行した。これにより、2021年4月に始めた県内11地区の店舗ネットワーク改革が完了。営業担当者と事業性融資業務を各地区のブロック統括店に集約する新体制により「質の高いサービスを提供するための攻めの営業体制が構築できた」(菅友和取締役営業企画部長)としている。
■肥後銀行、行内外で脱炭素化実践、ペン1本の排出量も把握
【福岡】肥後銀行は、行内外で脱炭素化に向けて取り組んでいる。行内では2050年度までに二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを目指し、4月からユニークな活動を実施。行外では地元企業へのコンサルティングに注力している。
【写真】オンライン開催した「サテライト店長等会議」(山形銀行旅篭町ビル)
2022年5月20日号18面 金融界の2023年卒採用、51行・庫が選考方法見直し
対面シフト、グループ討議も
銀行と預金量上位50信用金庫の主要157機関の2023年春入社の新卒採用活動で、約3割にあたる51行・庫が選考方法を見直す方針であることが本紙調査で分かった。一部の面接をオンラインからオフラインに切り替えるほか、選考にグループディスカッションを導入する動きもある。
22年卒採用活動は、新型コロナの感染状況の悪化で銀行を中心に最終面接までオンラインで完結するケースが多かった。23年卒採用は、感染状況が落ち着いていることから、…
2022年5月20日号20面 北陸銀行五稜郭支店、M&A・承継支援、後継難と多角化ニーズ結ぶ
2年半かけ全株譲渡実現
【札幌】北陸銀行五稜郭(ごりょうかく)支店(橘淳支店長=函館中央エリア統括、行員11人うち渉外6人、嘱託・スタッフ9人)は、M&A(合併・買収)やホールディングス(HD)化を通じた取引先の事業承継支援に注力する。支援した産業機械製造業「原工業」(北海道函館市)の例では、2021年4月、別の同行取引先への全株譲渡を実現。後継者不在や経営基盤強化、雇用維持といった課題の解決を後押しした。
1966年創業の原工業は、2021年9月期の売上高約11億円、従業員約40人。セメント生産設備製造が主力。主要取引先の太平洋セメント・上磯工場(北海道北斗市)構内に工場を持ち…
【写真】原工業の本社工場。左から北陸銀行・五稜郭支店の別田匠係長、橘淳支店長、原工業の佐々木圭子専務、山下弘純社長(4月19日、北海道函館市)